竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 ミレイナが呟くのと同時に、うさぎのような耳がポンッと髪の合間から現れ、尻尾が生える。ミレイナはその姿になると、頭上にいるリスに声を掛けた。

[こんにちは、リスさん。アリスタ国はどっちかしら?]
[こんにちは、お嬢さん。アリスタ国ってなんだい? 木の実なら、この木の上にまだ残っているから採りに行くといいよ]

 リスは動きを止めてミレイナにそう言うと、すぐにどこかへと走り去ってゆく。

 獣人には、見た目の変化だけでない特殊能力がいくつかある。
 ミレイナのようなウサギ獣人の場合、最も代表的なことは耳のよさだが、それとは別に全ての獣人に備わっている能力もある。それは、獣、もしくは半獣の姿を取っているときは動物と会話できることだ。

「帰り道を聞きたかったんだけどなぁ……」

 ミレイナは思ったような情報を得られず、長い耳をしょんぼりと垂らした。そもそも、リスはさほど行動範囲が広くないし、国名を言っても通じるわけがなかった。

「どこかに渡り鳥でもいないかしら?」

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