センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅

その夜 奏斗から 電話があったのは 9時過ぎ。

『さっきは ゴメンね。やっと今 鍵開いたよ。』

『そう。よかったね。』

自分でも 嫌になるくらい 冷たい声になる私。


『葉月 今から 行ってもいい?』

『はぁ?何しに?』

『さっき 食事 途中で出ちゃったから。ケーキでも 買っていくよ。』

『いらないわよ。それより 奏斗 やっぱり私 もう奏斗とは 付き合えない。別れよう。』

『何言っているんだよ。俺が 好きなのは 葉月だけだよ。そんなこと 言わないでくれよ。』

『奏斗 もうカンナさんとは 会わないって 言ったじゃない。でも カンナさんが 困っていれば 私を放置してでも 助けにいくんでしょう。もうイヤなの。こんなこと…』

『とにかく 今から行くから。』


30分足らずで アパートまで来た奏斗。

玄関を 開けると 私を 抱き締めた。


「本当にゴメン。葉月。」

「離して…」

「悪かったよ 葉月。もう カンナとは 連絡取らないから。約束するよ。」

「無理よ。奏斗は また カンナさんが 困っていたら 行くわ。」

「もう 行かないよ。カンナにも はっきり言うから。」

「私 わかったの。さっき 1人で帰りながら。奏斗 私とカンナさんが 同時に溺れたら カンナさんから 助けるわ。絶対。私は ずっと 2番目なのよ。奏斗の中で。ねぇ。カンナさんと よりを戻せばいいじゃない。そうすれば 誰も 巻き込まれないし。奏斗も 好きなだけ カンナさんを 助けられるでしょう。」

「何言ってるの?俺とカンナは そういう関係じゃないし。俺が 好きなのは 葉月だから。」

「私のことは 好きだから 犠牲にできるんだ。じゃ 私も 奏斗と別れたら 奏斗に助けてもらえるね。一番に。」

「そんなこと 言うなよ。俺は 葉月が 一番だから。犠牲にしてるつもりなんてないし。」

「私 さっき 1人で歩きながら すごく怖かった。もし 今 変な人に 襲われたら 奏斗 どうするのかって 本気で思った。でも 奏斗は 私を 置いて行けるんだよね。カンナさんの所に…」

私は 悔しさと悲しさで 泣きながら 言う。


「葉月…本当に ごめん。もう 絶対 葉月を1人に しないから。」


そう言って 私を抱き締める奏斗。

私は 奏斗の胸で 声を上げて泣いた。






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