君が君だから俺は君に愛を告げる
思いを
コンペ終了後、1番下っ端の俺たちは、会議室の片付けをする。

 すると、突然、佐山から声を掛けてきた。

「あの……」

「ん?」

なんだ? 珍しい。

「さっきは、私の案を……ありがとう」

とても言いにくそうに、恥ずかしそうに言う佐山。いつもの勝気さはどこへ行ったのか、そのしおらしさが俺の胸の奥をくすぐった。

「何? いつもの威勢の良さはどこ行ったんだよ。愛の告白でもされるかと思ったじゃん」

俺は思わず笑みをこぼしながら、あえてそんなことを言ってみる。そうして、コンセントから抜いた延長コードを手に、佐山にゆっくりと歩み寄って行く。

「すっ、するわけ、ないでしょ⁉︎ なんで、あんたなんかにっ……」

焦ったようにする反論は、声が裏返ってるところが、またかわいい。なんで、今日はいつにも増してかわいく見えるんだ? 珍しくしおらしいからか?

「そう? 俺は好きなんだけど」

言えた! ずっと言いたかった俺の気持ち。

「…………は?」

佐山が信じられないと言うように固まった。

「俺は、佐山が好きだよ」

俺は、佐山に信じてもらえるように真っ直ぐ見つめて思いを告げる。

「ま、また、そうやって私をからかって遊ぶつもり!?」

うろたえた佐山は、あくまでも冗談にしてしまいたいようだ。だけど、そんなことはさせない。俺はもうただの同期はやめるって決めたんだ。

 俺はゆっくりと佐山に歩み寄る。佐山は俺に気圧されるように一歩、また一歩と後ずさる。俺は、手にしていた延長コードをプロジェクターの上に置き、そのまま佐山に向かい、歩いていく。

 佐山の背中が会議室の壁に触れた時、佐山は困ったような少し不安そうな複雑な表情を浮かべた。

「えっと…… あの…… 柏崎?」

佐山の目の前に立った俺は、戸惑いながら見上げる彼女に思いを告げる。

「佐山は鈍感だから、気付いてないだろうとは思ってたけど…… 俺は、佐山が好きだよ。だから、佐山も考えてみてくれないか?」

「か、考えるって、何を?」

「もちろん、俺と付き合うことを。佐山、今、男いないだろ?」

トン……と俺が佐山の顔のすぐ左に手を突き、逃げ場を奪う。

「い、いないけど、私、別に、柏崎のこと、好きじゃないし」

そんなことは、知ってるよ。
残念だけど、仕方ない。

俺は、少し屈んで佐山の目を間近で見つめる。


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