「指輪、探すの手伝ってくれませんか」
別にそういう趣味はない。けれども形として表すならば、きっとこれが一番妥当な形だろうと思った。
「という訳なので私を巻き込むのだけはやめてくださいね」
ソファーに私、その足元で向かい合う形で当然床に正座をしている酔っ払いクソ野郎、改め、志乃宮さん。楕円形のガラステーブルを横に避けさせてまでそうした事に特に意味などありはしないのだけれども雰囲気は大事だよね!って話。
「何か、質問は?」
話終え、そう問いかければ、床に落ちていた志乃宮さんの視線がゆっくりと上がる。かちりと互いのそれが合わさったのを合図に、おずおずと目の前の男は右脇腹辺りで手を上げた。
まぁそうだろう。話始めてから何度か口を挟もうとしていた彼を「黙ってろ」と足蹴にしたのは、何を隠そうこの私だ。話に水を差されるのはあまり好きではない。しかしもう言いたい事はあらかた吐き出した。よって、そなたの発言を許可しよう。
「はい、志乃宮さん」
どうぞ、おっしゃってくださいな。
上から目線でそれを告げれば、目の前の男は何故か困ったように眉尻を下げた。
「……あの、僕、」
「はい」
「彼女、いません」
「は…………は!?」
「その、僕が彼女と間違えたって御来屋さん言ってましたけど、恋人とかいませんし誰かと間違ったわけじゃありません」
「……」
「御来屋さんだから、その、我慢出来なくて、」
かと思えば、これでもかというほどに顔も耳も真っ赤に染めて、へにゃりと笑う。
「ぼ、僕、御来屋さんが好きです!」
我慢出来なくて、だと?
いや、そこはしろよ。据え膳ですらなかっただろが寧ろ世話掛けたのは貴様だろうが。
「きっ、キスと、ききキスマークの責任取ります!取らせてください!何でもします!僕と、僕と付き合ってください!」
「……何でも?」
待ってそれじゃ新しい家が決まるまでここに住まわせてとかそんなのもあり?ありなんだよな。だって何でもだもの。
「はい!何でも!」
「無理ですごめんなさい」
だが断る。