❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀
今、彼女はこの間、働いた分、休んでいた。この間、彼女はクリスマスイプを祝い、沢山豪勢な食事を作り、皆で、七面鳥を食べており、朝から、用意していたケーキやパンも、沢山焼いていた。
パンはパンでも、焼けないパンは―――なんという、駄洒落を思い出す。クリスマス会は楽しかった。互いの両親と菜緒の両親と姉の茉莉が遊びに来ており、キッチンでは入りきらない。ケーキはリビングに置いてあり、ひんやりとしている所にあるから、大丈夫な筈である。パンも腐らないように、保冷していた。彼女は今、夢を見た―――。それは―――智也と喧嘩する夢で、あまりいい夢ではなかった。ベーカリーとパティスリーは、彼なしでは、自分だけでは上手く出来なかった。
あの時、彼と喧嘩してしまい、彼は家まで、出て行きそうになった。喧嘩して、良い思いなんかしない。だから、一緒に居て―――不安な時もあった。だけど、今思うと、その智也は菜緒の為に、言っていたことで、彼女にこう言っていた。
『―――御前・・・パンが出来なくなったのは、腕前の所為じゃない・・・自分の気持の所為だ。こんないい加減な気持ちでいるから、こんなにぐっちゃぐっちゃのパンになるんだ―――。此処を続けたいなら、俺と一緒にいたいなら、このくらいの事―――察してみろ。』
はっきりとそう言われ、菜緒は黙ってしまった。菜緒はそのまま泣き出すと、彼は何処かに、言ってしまった。それで―――腕を怪我し、骨折してしまい、パン作りが出来なくなってしまった。
智也も言い過ぎたと言ってきて、菜緒は抱きしめた。この人を、失いたくない。一緒にいたい。
―――だから・・・逃げないで・・・一緒にいて・・・
『―――お前は・・・甘えん坊が、治ったようだな・・・』
―――お前が無事で・・・よかったーーー
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