❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀

第十章-――初詣-――

―――今、智也と菜緒は一緒に賽銭に並んでおり、ふと、彼女は智也の事を見ていた―――。智也は自分に気持ちを言ってくれるようになり、言葉に現わせない事もしてくるが、それが―――彼なりの、愛情表現だと思った。智也は小さい頃、好きだった人がいたようだ。それは―――自分の近所にいた子で、一緒に結婚してと、約束している女性だった。その子の名前は、完全に薫だった。
薫は美人であり、以前、菜緒がボディーペインティングをやる前、一等賞をとっていた―――。彼女の事を、今でも、好きなのか、確かめようと思ったが、彼女は避けて何処かへ行ってしまった。
彼女は―――菜緒は、薫という女性が気になり、いつもの様子と違い、彼は心配そうに見ていた。
『―――どうした?ボーっとしてるぞ・・・何をしている?』
彼女は慌てて我に返ると、『―――ごめんなさい・・・ちょっと、薫さんという女性が気になって・・・どうして、私を睨んでいたのか・・・私・・・何か気に障るような事、したのかしら?』と、泣きそうになりながら、並んでいた。
『―――あぁ・・・あいつは、今・・・他の男性と付き合っているみたいだから、安心していたんだけど、小さい頃、好きだった事もあるが、今は・・・俺が好きなのは、お前だから―――。』
―――言っただろう・・・大事にしているって・・・
その言葉に、菜緒は『―――それ・・・本当に私に言っているの?あの・・・薫って女性に言っているんじゃないの?』と問う。
その時、彼は『―――何を言う・・・過去は過去だ・・・今は・・・お前がいる・・・』と言い張った。その言葉に、菜緒は真面目に見てくる。
―――本当・・・かな?
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