❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀
『―――ちょっと・・・智也の御父様なのよ?自分の子供を・・・殺すわけ、ないでしょう。貴方達―――酷いわ・・・智也が・・・どんな思いで―――。』
その時、彼女は『―――、・・』と、泣き出してしまった。―――自分が・・・我儘を言ったから?―――だから、こうなったの?―――酷いのは―――私―――?
『―――貴方・・・智也に甘えすぎていると思ったけど、そうじゃなかったのかしら?―――智也の方が・・・首ったけだったのかしら?私とこの人・・・夫婦だった。だから、分かるわよね。自分の子供の命が危ない。そういう思い、知って置いた方が・・・良いわ・・・』
『―――私の所為?子供まで・・・失いそうになったの?私が・・・飲み過ぎた所為なの?』
彼女はずっと好きだった人と一緒におり、確かに、智也に甘えん坊な時が、沢山、沢山、あった。
だから、そうならないように、気を付けていた、筈だった。医者の言う通りかもしれない―――。
『―――一緒に・・・歩けるの?一緒に・・・暮らせるの?子供の事を、忘れちゃうの?―――』
彼女はギリッと唇を噛みしめると、『―――冗談じゃないわ・・・』と、はっきりと言った。私の事も―――忘れるなんて、絶対に―――許さなから―――。
『―――このパン・・・智也が好きだった、アップルパイとレモンパイを持って行けば―――思いだして、くれる筈よ―――。』
―――だから
だから―――
待っていて―――
智也―――
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