やがて春が来るまでの、僕らの話。


仕事を終えて、杉内くんより先に従業員部屋に戻っていく。

店用の靴を下駄箱にしまって、家から履いてきたパンプスを取り出す。


……はずだったのに。



「、…」



下駄箱を開けた瞬間、遠い昔の悪夢が舞い戻ってきた。



なに、これ……


パンプスが、刃物でボロボロに傷つけられている。



なんで……



「ハナエちゃんお疲れー、早く着替えて行こー」

「!」


後ろから現れた杉内くんに焦って、靴箱の扉をバン!っと閉めた。

あの日、学校の玄関で陽菜が後ろに立ったときと同じように……


「どうかした?」

「ううん、なんでもない」






仕方ないから仕事用の靴を履いて帰ることにした。

幸い杉内くんは飲み会のことで頭が一杯で、私の足元には気づいていない。


スキニーデニムにこんな真っ黒の靴、どう見たってへんてこりんな組み合わせにしか見えないのに。


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