やがて春が来るまでの、僕らの話。





<若瀬side>




「律くん?」


来ないって言ったはずの律くんを見かけて、1人で追いかけたあと。

やっと追いついた場所で、スーツ姿の律くんは花火を見上げていた。


俺の声に視線を下ろして目が合うと……律くんは笑った。


「お疲れ」

「仕事じゃなかったの?」

「仕事だったんだけどさ、なんか急に嫌になって放棄してきた」

「え、いいのそれ」

「たまにはいいじゃん?」

「まぁそうだね。律くん日々真面目に働いてるし」

「だろ?」



笑いながらもう1度花火を見上げた律くんは、どうしてかすごく穏やかな顔をしている。



「ねぇ、志月」

「なに?」



瞬きを忘れたように開いている目に、花火が何度も映っては消えていく。



「カッシーとハナエちゃん、今一緒にいる?」

「……」

「今あいつら、ちゃんと2人でいる?」

「、」



なんでだろう。

あいつらが2人だけでどこかに行ったことを、まるで知っているような言い方だ。


「…知ってたの?」

「ん?」

「カッシーとハナエがいなくなること、知ってたの?」

「……」



少しだけ黙り込んだあと、律くんは話し出した。

俺の知らない……俺たちの知らない、カッシーとの出来事を。


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