やがて春が来るまでの、僕らの話。


あいつこんな寒い日にどこほっつき歩いてんだって、アパートを出てすぐにスマホに掛けてみる。

だけど電源が入ってなくて繋がんない。

取り合えず手分けして捜すことになったけど、あいつの行きそうな場所なんて分かんねぇ。

小さい町だからすぐ見つかりそうなもんだけど、こんなときに限ってよく起こるはずの『偶然』は姿を消すんだ。



「…いねぇ」


商店街を一軒ずつ訪ねてみても、女子高生の姿すら見つからない。

学校になんているはずないし、スーパーとかコンビニにもいない。


「じゃあどこだよ…」



まじでわかんねぇ。


全然わかんねぇ。


あいつが行きそうな場所。


あいつが行きたがってた場所……




───“……大吉がいいなぁ”




「、…」



いやまさか、いくらなんでもいないだろ。って、すぐに頭を切り替える。

だってなんとなく言っただけの言葉だろうし、大吉なんて別に……



別に……



「っ…」



足が、神社に向かって走りだす。


もう、手掛かりなんてほとんど無い。

だったら手当たり次第行くしかないから、神社に向かって猛ダッシュ。


俺、大晦日の夜もこんな風に走ったなって思い出す。

その日もあいつを捜して走ったんだっけ。


なんなの。

まじでなんなの。


俺、走るの嫌いなんだけど!


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