小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
プロローグ
 期末試験を明日に控えたその日、使役される罪人よろしくこうべを垂れて、揃って駅に向かう人の群れの中に私はいた。

 白のブラウスにラベンダー色のリボン、グレンチェック柄のベストと同色のスカート。いかにも女子高生というスタイルだが、私はあまり好きではない。

 陸上部ではもっと短いパンツをはくので足を出すのは恥ずかしくはないけれど、スカートは短パンと違ってひらひらしていて落ち着かない。小学生のときから陸上女子である私は、髪型もずっとショートヘアだし、毎日の日焼けで肌は小麦色。快活が具現化したような外見には、可愛いと評判のうちの制服は合わないのだ。

「おーい!凛音(りんね)!」

 うしろから声をかけられ振り向くと、同級生の若柳(わかやなぎ)琉菜(るな)が追い付いてきて、背中を叩いた。

「珍しいね、朝練は?」

「一週間前から部活は禁止だよ。自主練も今日はやめた。明日テストじゃん」

 中間テストの際に、赤点から追試という流れを三教科ほどやらかした私としては、今回ばかりは落とさないという気合で一週間前から勉強している。

「あーそうだっけ。なんも勉強してないや。昨日読み始めた小説が思いのほかおもしろくて、一気読みしちゃった」

「琉菜、大丈夫なの? 前も追試受けてたじゃん」

 前回追試仲間だったからちゃんと覚えている。
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