小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「レオは相変わらず嫉妬深いね。心配しなくても、僕はちゃんと君たちのこと、祝福しているからね。それに、これから魔術院の立ち上げだなんだと忙しいんだ。女性に夢中になっている暇もないし」

 クロードは、今回の研究結果をもとに、ハルティーリアにも魔術を復活させようとしている。
まずは魔術が得体の知れないものという印象を変えるところからだ、と今回のローレンの功績を周知させ、魔術は人を癒すものという切り口で攻めるつもりらしい。

『あの人、優しそうな顔してるけど、結構サド! 私の体はひとつしかないのに、持ってくる仕事量がえぐすぎる!』
 と、すっかり広告塔にされたローレンは、時々私に愚痴を言いに来る。

「リンネ様、お食事の時間です」

 そこに、侍女がお盆にのせた食事を持ってくる。まだ回復中の私の食事は、パンがゆやフルーツヨーグルトなど喉通りのいいものばかりだ。

「じゃあ、邪魔者は退散するよ」

 ひらひらと手を振って、クロードが出ていく。代わりのように、レオが腕まくりをして、侍女から盆を受け取った。
 ……当然のように、食べさせようとするんだもんな。嬉しいやら恥ずかしいやら……いや、恥ずかしい方がかなり強い。

「ほら、口開けろ」

「ひとりでできるってば」

「駄目だ。傷が治るまでは俺の言うことを聞け」

 渋々口を開けると、適温に冷まされたパンがゆが舌にのせられる。おいしい、うん、おいしいけどやっぱり恥ずかしい。レオが満足そうに笑っているところが、尚更体中をむず痒くさせる。

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