乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版

【願いごとの持ち腐れ】

また時は流れて、11月7日の正午過ぎのことであった。

ところ変わって、松山市古川北の裕介が店長を務めるスタバにて…

この日、ダイキ(ホームセンター)でバイトをしていたけんちゃんは、バイトを中断してここへやって来た。

義兄(にい)さん困るねん…

オレは、今バイト中なんだよぉ~

ものすごくコンワクしているけんちゃんが店舗に到着した。

けんちゃんが到着した時、店舗の奥に裕介倫子夫婦と27歳か28歳くらい(私・イワマツと同世代)のモデルさん風の女性が座っていた。

ぼうぜんとした表情を浮かべているけんちゃんに世話焼きの女性店員さんが声をかけた。

「あ、けんちゃん…けんちゃん、よぉきたねぇ~義兄(おにい)さんが待っとるけんはよゆこや。」

世話焼きの女性店員さんは、けんちゃんの腕を強引に引いて、指定された席へ向かった。

裕介倫子夫婦と女性が座っている席にて…

世話焼きの女性店員さんは、裕介倫子夫婦にけんちゃんを連れて来たことを伝えた。

「お待たせしました。弟さまをお連れしました。」
「ありがとう。」

けんちゃんは、とまどい気味の声で裕介に言うた。

「義兄さん…義兄さん。」
「(のんきな声で)おっ賢也、よぉきたねぇ~」
「義兄さん、困るねん…今、バイト中なんだよぅ~」
「(のんきな声で)ああ、バイトの手を止めてすまんかったのぉ~」
「それよりも、コレは一体どういうことなんぞぉ~」

裕介の端に座っている倫子は、けんちゃんに女性を紹介するわねと言うた。

「賢也さん、今から紹介するわね…義父さまの知人の娘さんよ。」

女性は、けんちゃんに一礼してからあいさつをした。

「初めまして…近永すみれです。」

すみれさん(以後、こう表記する)は、深々とけんちゃんに一礼した。

けんちゃんは、ますますとまどい気味の声で裕介に言うた。

「義兄さん…」
「なんぞぉ~」
「どうして…義父さんの知人の娘さんをぼくに紹介したのかなァ~」

裕介は、ややあきれ気味の声でけんちゃんに言うた。

「オメー、ほしくないのかよぉ~」
「ほしくないのかよぉ~って…」
「オメー、好きなカノジョがほしいと言うたじゃないかえ…オメーのためにオレと義姉さんはあちらこちらを回ってお願いしたのだぞ…素直にうれしいと言えよなぁ~」

倫子は、過度に優しい声でけんちゃんに言うた。

「賢也さん、ほら座って…」

倫子は、すみれさんの向かいの席にけんちゃんを強引に座らせた。

世話焼きの女性店員さんは、ケースの中から焼き栗モンブランとフランスアップルタルトを出してお皿に盛りつけて、お盆に載せた。

続いて、別の店員さんがいれたトールのドリップコーヒーをお盆に載せた。

その後、けんちゃんとすみれさんの元に運んだ。

「はーい、焼き栗モンブランとフランスアップルタルトよぉ~」

女性店員さんは、けんちゃんとすみれさんにトールドリップコーヒーと焼き栗モンブランとフランスアップルタルトを差し出した。

このあと、けんちゃんとすみれさんはお話しを始めようとしていたが、話が思うように進まずにコンワクしていた。

さて、その頃であった。

またところ変わって、尾鷲市の国道42号線沿いにあるオシャレな洋風建築のレストランにて…

この時、多賀家の親類のご子息さまの結婚披露宴が開かれていた。

たつろうさんの実家の4・5世帯の実家の家族は、指定された席でランチを摂っていた。

ちょうどその時だったけど、さよこの両親が多賀家の4・5世帯の家族のもとにずうずうしくやって来た。

さよこの両親は、4・5世帯の家族たちに『なんぞくわせろ』と言うて空いているイスに座った。

それからひと間隔置いて、さよこの両親は政子六郎夫婦にカネをユウヅウしてくれと言うた。

「あのぉ~ちょっと言いにくい話なのだけどぉ~」
「どうかなさいましたか?」

さよこの母親は、政子に言いにくい声で言うた。

「実はねぇ~…主人が(さよこの末弟)の学資保険を勝手に解約したけん、家が困っとんのよぉ~」

それを聞いた政子は、コンワク気味の声でさよこの母親に言うた。

「まあ、どうしてそなな大事な学資保険を解約したのかしら…(さよこの末弟)さんは、来年高校受験を控えているのにどないするのよ…それで、取り崩した分は何につこたんよ?」
「何にって…主人の知人を助けるおカネにつこたんよ…主人は困っている人を見かけたらところかまわずにカネをばらまく性格だから…うちは困っとんよ。」

母親のとなりに座っている父親はヘラヘラした表情を浮かべている。

母親は、父親に『あんたええかげんにしいや!!』と言う表情でにらみつけたあと、政子にカネの無心をした。

政子は、コンワクしながらもさよこの母親におカネをユウヅウすることを伝えた。

さよこの母親は、政子にお礼を言うた。

「おおきに…助かったわ。」
「いいのよいいのよ…困っている時は助け合わないと…ねえあなた。」

政子の横にいる六郎は、にがわらいの表情で『ああ、そうだよな~』と言うた。

このあと、さよこの両親はテーブルの上に置かれている料理を食べさせてもらった。

さよこの両親がパクパクパクパクと料理を食べているのを見た3組の兄夫婦の家族とあつろうと和子は、シラけた表情でさよこの両親を見つめていた。
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