乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版

【メモリーグラス・その2】

時はアメリカ東部時間・3月10日朝7時頃であった。

A班のメンバーたちが乗っている専用機がフロリダ州の小島・キーウエスト国際空港に到着した。

専用機は、整備点検を行うために48時間駐機場に入る。

A班のメンバーたちは、その間サザンモスト・ビーチリゾート(高級モーテル)に滞在して仕事を続ける。

3月11日は、タンパシティの宝石研磨工場の社長さんたちと商談の予定が入っている。

A班のメンバーたちは、明日の商談の準備を整える。

B・C・Dの3班のメンバーたちも、世界各地で1日も休まずに活動を続けていた。

イワマツグループの全メンバーたちが1日も休まずに世界各地で活動しているのに、たつろうさんの実家でどーでもええもめ事が発生した。

事件は、日本時間の3月11日午後1時頃に尾鷲市のたつろうさんの実家で発生した。

たつろうさんの実家の大広間に、礼服姿の地区の人たちがたくさん集まっていた。

この日は、地区の若者同士の結婚披露宴がひらかれるので、たつろうさんの実家の大広間が使われる。

出席者の前に置かれているはこぜんに、かっぽう重が置かれている。

台所では、政子と優香と由芽と近所の奥さま10人が料理を作っている。

玄関前の居間にいる六郎は、ヘラヘラした表情でおこしになった人たちにあいさつをしていた。

その時に、台所にいる優香がイラついた声で六郎に言うた。

「義父さま!!」
「なんぞぉ~」
「義母さまがたつろうさんの家に電話してと怒ってはるわよ!!はよ電話してや!!」
「分かったよぅ~」

優香にどやされた六郎は、しぶちんの表情で黒電話の受話器を上げてダイヤルを回した。

(ジー、ジー、ジー、ジー…)

ところ変わって、松山市恵原町(えばらまち)にある庄屋の家にて…

庄屋の家は、たつろうさんのよめはんの実家である。

松山市中心部にある本来の住まい(穴吹工務店のサーパスマンション)は、たつろうさんのよめはんと長女(女子大生・よめはんの最初のダンナの連れ子)が家を空ける時が多いために不在であった。

そのため、4歳の次女(二番目のダンナの連れ子・二番目のダンナのセクハラが原因で妊娠したOLさんの子である・二番目のダンナとは数日で離婚した)は、恵原町の庄屋の実家に預けられていた。

(チリリリリン…)

居間に置かれている黒電話が鳴っている。

4歳の次女が受話器を上げてお話しをした。

「もちもち…小関でちゅ…」

受話器ごしにいる六郎は、切迫詰まった声で言うた。

「もしもし…(たつろうさんの次女)ちゃん、尾鷲のジイジだよ。」
「尾鷲のジイジね。」
「すまんけど、大急ぎでママ呼んでくれるかなぁ~」

六郎の言葉に対して、(たつろうさんの次女)ちゃんはむじゃきな声で六郎に話した。

「あのねジイジ、きのうね、幼稚園でこんなことがあったのよ。」

六郎は、ものすごく困った声で(たつろうさんの次女)ちゃんに言うた。

「(たつろうさんの次女)ちゃん、ジイジはあせっているのだよぉ…大急ぎでママ呼んで!!」
「(ワガママ声で言う)ヤダ!!お話し聞いて!!」
「それはまた今度にしてや…」
「ヤダ!!」
「ジイジはあせっているのだよぉ~大急ぎでママ呼んで!!」

その時であった。

電話中の六郎に、地区の若者(30歳男性・全農の職員)がものすごい血相で詰め寄った。

「コラワレ!!コラといよんのが聞こえんのか!?」
「ああ、(4軒となりの家の息子さん)…どないしたんで?」
「どないしたんでじゃなかろがボケ!!いて回すぞ!!」
「ああ、ちょっと今は取り込んでいるからまた今度にしてくれるかなァ…」
「オドレどついたろか!?」

(ドカッ!!)

男性は、右足で六郎をけとばして倒した。

「なにするんだよぅ~」
「オドレがまた今度また今度といよるけんどついた!!」
「なんで私がどつかれなきゃならんのぞ~…私にどなな落ち度があるのかなぁ~」
「落ち度があるけんけつった!!オドレがよめはんの世話をしたろかと言うけん引き受けたけど、待たされてばかりいるけん怒っとんや!!…また今度また今度また今度また今度また今度…あんたの言うまた今度の意味がわからへんねん!!」

六郎は、男性の前で必死に命乞いをした。

「こらえてくれぇ~この通りだ~」
「やかましい!!いて回したる!!」
「まだ1組がまとまってないのだよぅ~あと8組が待っているのだよぅ~」
「それまで待てと言うのか!?」
「あと8組まとめたらお世話するから…待ってくれぇ~」

そこへ、眼帯をつけているたけろうがやって来て、六郎の背中を木刀で殴りつけた。

(ドカッ!!)

「オドレええかげんにせえよクソボケ!!ボコボコにどついたろか!!」
「たけろうさんやめて!!なんで義父さまを木刀でどつくのよ!?」

由芽が発した言葉にブチ切れたたけろうは、木刀を持って乱入した。

(ガシャーン!!ガシャーン!!ギャー!!)

たけろうは、木刀でお膳を次々と壊したあと出席者の人たちと乱闘さわぎを起こした。

この時、よいたんぼのおっちゃんたち(漁師のおっちゃん連中)30人がやって来た。

よいたんぼのおっちゃんは、プロ野球の南海ホークス(今は福岡ソフトバンクホークス)時代の応援ハッピをはおって、一斗缶や小皿をたたくなどして乱闘さわぎをけしかけた。

そしたら、乱闘さわぎが拡大した。

六郎は、あとから来た若い男性8人たちに集団でいて回された。

それを端にいたツッパリども(となり町の与太校のツッパリ連中)20人がけしかけた。

たまりかねた政子は、頭がサクラン状態におちいった。

政子は、台所の戸棚からバファリン(鎮痛剤)を取り出した。

この時、政子のイライラが頂点に達したので全錠(ぜんぶ)あけてのもうとした。

「義母さまやめて!!」
「ぜんぶのんだら身体に悪いからやめてー!!」
「だれかー義母さまを止めてー!!」

優香と由芽は、必死になって政子を止めるが、政子はきわめて危険な状態に置かれていた。

それから30分後に、近所の若者たち50人(自警組織)が介入して乱闘さわぎはおさまった。

乱闘さわぎに関わったよいたんぼのおっちゃん連中と与太校のツッパリ連中全員とたけろうにボコボコにいて回された出席者の人たちの8割と六郎はボロボロに傷ついた。

乱闘さわぎのせいで、結婚披露宴中止になった。

それと同時に、新婦新郎さんは結婚自体をやめて別れた。
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