乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版

【恋一夜】

次の日の正午過ぎのことであった。

たつろうさんの実家の大広間で印刷工場の従業員さんたち8人がボソボソとお弁当を食べていた。

すぐ向かいにある台所で、印刷工場の機械工の主任の男性(33歳)と地区の花屋さんで働く女性(22歳)が料理を作っている。

ふたりは、近所の夫婦の仲人でお見合いをしている。

ボソボソとお弁当を食べている8人の従業員さんたちは、鋭い目つきで台所を見つめていた。

同時に、社長さんに対する不満を抱いた。

政子は、不安げな表情でかれらを見つめている。

そこへ印刷工場の社長さんが縁側にやって来たので、政子はやさしく声をかけた。

「あら、社長さん。」
「奥さま。」
「いつもごくろうさま。」
「ああ…あさってが期限の手形を決済することができたけん、やっとひといきついた…話し変わるけど、(機械工の主任)くんはうまくやってるかなぁ~」
「ええ、おふたりで仲よくカレーを作ってるわよ。」

政子は、社長さんに『お水を持ってくるね。』と言うて台所へ行った。

その時であったけど、図体がでかい男性従業員さんのAくんがお弁当を二つも食べていたのを社長さんが見た。

びっくりした社長さんは、Aくんを問い詰めた。

「コラ!!」
「なんぞぉ~」
「なんぞぉ~じゃなかろがボケ!!キサマはなんでお弁当を二つも食べよんぞ!!」
「午後から仕事がたくさんあるからと言うけん食べているのだよぅ~」
「コラ!!オドレはいつからドロボーするようになったんぞ!?」

(ガーン!!)

「ワーン!!」

社長さんは、Aくんのこめかみをグーで殴りつけた。

殴られたAくんは、ビービービービービービービービー泣き出した。

それを聞いた政子が台所から出てきた。

「ちょっと社長さん。」
「奥さま。」
「なんでAくんを叩くのよぉ~Aくんにどんな落ち度があるのよぅ~」
「落ち度があるから叩いた!!」
「だからなんの落ち度があるけん叩いたのよぉ~」
「(Aくん)がお弁当を二つも食べていたから叩いた!!(Aくん)は甘やかされて育ったから叩かんと言うこと聞かんナマクラだ!!」
「ワーンワーンワーンワーンワーン…」
「ちょっと社長さん!!従業員さんたちのお弁当の注文数を確認しているの!?」
「注文しているよぅ~」
「ほんならもう1回数え直しなさいよ!!」
「分かったよぅ~」

社長さんは、8人の従業員さんたちが食べているお弁当を取り上げた。

「なにすんだよ!!」
「ドロボー!!」
「待ってくれぇ…もう1回数え直すから…待ってくれぇ~」

社長さんは、お弁当を取り上げたあと足早に会社に戻った。

お弁当を取り上げられた8人の従業員さんたちはソートー怒り狂っていた。

社長さんが数え直している間に、彼らは職場放棄してマージャン店へ遊びに行った。

この時、政子は将之がここでお弁当を食べなくなったことに気がついた。

もしかしたら、将之は給与引きで注文して食べるお弁当に不満があるのではないのか?

どう考えても答えが出なかった。

そんなことよりも、政子は頭の痛い問題を抱えていた。

頭の痛い問題は、和子のことであった。

朝と晩に食べる食事の分量がひとつ足りない日が多く続いているので、政子はフシンに思っていた。

政子は『優香が作り忘れた』と言うた。

けれど優香は『家族全員に行き渡るように作っている。』と言うてハンロンしている。

…ので、嫁姑間の関係が険悪になった。

その一方で、和子が両親の想いにこたえないのでイライラが高まっていた。

いつになったら白馬の王子さまは和子を迎えに来るのか…

いつになったら、この家のリフォーム代を払うことができるのか…

政子ひとりがカリカリカリカリイラつくので、家族全員がウンザリしていた。

夕方5時半頃であった。

優香は、台所で晩ごはんの準備をしていた。

(ジリリリリン…)

その時に、電話のベルが鳴ったので優香は電話に出た。

電話は、優香のボーイフレンドからであった。

優香がボーイフレンドからかかってきた電話に夢中になっている間に、和子が勝手口から侵入した。

そして、英彦が食べる分を盗んで逃げた。

その後、将之が暮らしているアパートへ持って行く。

将之が『できたての温かい料理が食べたい…』と言うたので、和子は『なんとかしてあげるから…』と答えた。

和子は、将之の想いにこたえるためにこななきたないことをしたのだ。

盗まれた英彦は、優香のいる家でごはん食べるのがイヤだった。

そんな英彦は、仕事が終わったあと倉ノ谷町の国道42号線沿いにあるすき家(牛丼屋)へ行って晩ごはんを摂っていた。

牛丼大盛りのみそ汁おしんこのセットで晩ごはんを摂っている英彦は、会社とハトコの夫の家族全員に怒りをつのらせていた。

英彦は、牛丼にラー油を大量にぶっかけた。

そして、みそ汁をラー油でヒタヒタにした。

それから8分後に果那がやって来た。

ふたりは、晩ごはんを食べながら楽しくお話しをしていた。

晩ごはんのあと、ふたりは国道42号線沿いにあるラブホへ行った。

英彦は、一晩中果那の身体をむさぼりまくった。

そして夜明け頃、そこから会社に出勤していつも通りに仕事をしていた。

英彦は、優香と優香の夫の家族に対して激しいうらみをつのらせた。

同時に、果那にイソンするようになった。

果那も英彦にイソンするようになった。

そしてふたりは、アリジゴクへ引きずられて行くのであった。
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