わらわないでほしいよ
そう言っても、彼はすごくわらっている。
「もう、わらいすぎだよ!」
「お前が、わらわせてんだろうが」
「……そっちが変なことばっかりするからだよ」
そう言ってわたしは、俯いてぷくーっと頬を膨らませた。
「そんな顔するとか、お前いくつだし」
呆れたように、またわらいだす彼。
「もう、そこまでわらう事じゃないでしょ」
「そっちだって人の事言えるか? そこまで拗ねる事ねぇのに。全く。可愛いくせに、もったいねーな!」
わらい終わった後に、唇を曲げた彼。
「え……?」
「なんだ、その顔。俺がお前のこと可愛いって思っちゃダメか?」
「……ううん!」
彼の質問に、わたしは必死に首を横に振った。
「違うの、嬉しいの」
可愛いくせにもったいねーな!
俺がお前のこと可愛いって思っちゃダメか?
彼の言葉が何度もわたしの頭の中でリフレインし、心がふわりと軽くなった。