超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
オープニングでアオくんが来てたから、今度はソラくんが来てくれるんだ。
すごい。
会場全体をひとりも余さず楽しませてくれるんだ。
ドキドキさせてくれるんだ。
今度は左後ろからすごい歓声。
来てくれた……!
「ソラだ。雪乃、ソラだよ!」
わたしの肩をバンバン叩いて教えてくれる花音ちゃん。
うん。ソラくんだ。
キラキラ、アイドルのソラくんだ。
どんどん近づいてくる。
「ソラくん!」
がんばって大きな声を出すと、ふいにこちらを向く。
あ、いまのはぜったいわたしだ。
わたしだと思いたい。
目が合うと、頬を膨らませる。
あれ……?
拗ねてる……?
そのまま近づいてきて耳元に口を寄せる。
「……あとでね」
「えっ?」
一瞬だった。
すぐに離れて、バーンと打つ動作をされる。
花音ちゃんにはウインクをする。
そのまま、ほかのファンとハイタッチをしたりエアハグをしたりピースをしたり、とファンサしながら走っていく。
「こ、腰抜けた……」
「今回ファンサ神だね!」
さっきの花音ちゃんと立場が逆になる。
お互い、推しに素敵なファンサをしてもらえた。