世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
話しはとんとん拍子に進み隣国からは第三王女のアナが嫁ぐことに決まった。この結婚が後に大きな大戦の火蓋になるとは、この時誰も思っていなかった。ルルは当然のように拒否したが、王は聞く耳を持たなかった。
「ならば最後に一目だけアリシアにあわせてください」
ルルは王子の威厳などかえりみず王の御前で額を床に擦りつけた。王は仕方なくアリシアに会うことをゆるした。

ルルの元にアリシアは召喚される。どことなくよそよそしいアリシア。
「・・・アリシア、私はお前を愛してる、君が私の気持ちに応えてくれるなら私は庶民として暮らすこともいとわない」
ルルのプロポーズにたいしてアリシアは押し黙る。
「・・・王子様、お幸せにおなりください」
アリシアはこの言葉以外の言葉を発してはいけなかった。王はウェルビンの娘、姉であるエルザを人質にとってあったのである。そんな事を知らないルルは何度もすがりついたが返ってくる言葉は同じ、
「お幸せにおなりください」
アリシアはこぼれおちそうになる涙を必死に堪えるのだった。それから間もなくして、アナは自国の大臣の部下に殺される。ドラグニールの国内、奇しくも辺境伯の領地内の出来事だった。これによって辺境伯は死罪になり、戦争が始まるのであった。
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