溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
さわさわと引き締まった体に触れ、夢でないのを確認していると、侑斗が思いついたように口を開いた。

「俺たちの関係を気にして仕事に身が入らない従業員もいるらしい。俺たちの婚約のことを明日にでも公表する」
「そんな、無茶です、大騒ぎになってしまいます」

ただでさえ侑斗との写真が拡散され噂になっているのだ。
婚約したと知られればそれこそ注目の的となる。
仕事に支障が出るのはもちろん人間関係にも大きな影響が出るはずだ。
想像しただけで梨乃は気が重くなった。

「噂だから気を遣うんだ。梨乃が俺の婚約者だとわかれば表立ってなにも言わない。というよりも白石家を相手になにも言えないし言わせない」
「そう……ですね」

断固とした侑斗の声音に気おされ、梨乃は頷いた。
あまりにも急な展開に心が追いつかない反面、侑斗の言葉は信じられると思ったのだ。
不安も消えていく。
梨乃は人心地つき、侑斗の胸に体を預けた。
その途端、侑斗は梨乃をソファに押し倒した。

「梨乃のご家族にも挨拶しないとな」
「は? 挨拶?」

それはまだ早すぎると梨乃は思ったが、侑斗の満ち足りた笑顔を目の前になにも言えなくなった。
< 141 / 273 >

この作品をシェア

pagetop