溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
侑斗と気持ちを通い合わせ幸せなのだが不安になることがあるのだ。
侑斗の近くにいればいるほどふたりの立場の違いを実感し本当にこれでいいのかと考えてしまう。
梨乃はふと湧きあがる切なさをやり過ごすように小さく首を振った。
20時を過ぎ、営業企画部では梨乃と小野、そして数人の男性社員が仕事を続けている。
ここ数日残業が続いている梨乃は小野が最近はまっているというコンビニ限定のカップラーメンを堪能していた。

「ラーメン、伸びますよ。早く食べて企画書を完成させましょう」
「それにしてもおいしいねこれ。私もコンビニで買って帰ろう」
「買って帰ってひとりで食べるんですか?」

小野が好奇心を隠そうとしない表情を梨乃に向けた。

「侑斗さんもやっぱりお湯を注いで三分待ったりするんですか?」
「……そう言えば、カップラーメンを食べる侑斗さんは、見たことないな」

 侑斗の自宅の冷蔵庫は、家政婦が定期的に補充する高級食材であふれている。

「侑斗さんの食生活にインスタントとかレトルトという言葉は存在しないと思う」

梨乃は冷蔵庫の中身を思い出しながら、小さくつぶやいた。
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