溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
梨乃のスマホが最新機種に変わってから数日、彼女の周辺はざわついていた。
ホテル内を歩いているとあらゆる場所から視線が向けられ、妙に落ち着かない。
視線の多くは女性からのもので、決して好意的なものではない。
すれ違いざまに厳しい目で睨まれたり、聞こえよがしにため息をつく女性もいたりと、梨乃は訳がわからず困っていた。
「この状況って……私、なにかやっちゃった?」
昼休み、営業企画部の休憩室でお弁当を広げながら、梨乃は困りきった声でつぶやいた。
ここ最近がらりと変わった周囲からの冷たい態度に、心当たりがなくどう対処すべきかわからない。
8人掛けのテーブルに向かい合って座る、同期で経理部の茅野千紗にそう言ってため息をつくが、千紗は驚いた様子もなく、それどころか興味津々とばかりに梨乃に視線を向けた。
明るく同期の中でも中心的存在の千紗を、梨乃はなにかと頼りにしている。
時間が合った今日は久しぶりに昼食をともにしているが、梨乃は席に着いた途端、困り切った顔で相談をもちかけたのだ。
「でもこんな写真が拡散しちゃったら仕方ないよね。。私も詳細な説明が欲しいんだけど?」
「写真……って、なんのこと?」
スマホを手に意味ありげに笑う千紗に、梨乃は嫌な予感がした。