強引な無気力男子と女王子
 「あー、もう!!!いつまでもウジウジしないでよ、真紘らしくないよ!」
 それでもまだ自分の気持ちに正直にならない私に、とうとう日葵の我慢にも限界が来たみたいだ。
 今まで見たことがないぐらい怒っている。
 「‥‥‥そうか。私、悠理のこと、好きなんだ‥‥‥」
 きっかけなんてない。
 知らない間に、私は悠理に惹かれていた。
 誰にも聞き取れないぐらい小さな声で呟いた言葉は、日葵には届いたみたいで、さっきまでの怒りはどこへ行ったのか、満面の笑顔で頷いてくれた。
 ‥‥‥やっぱり、日葵と親友で良かったな。
 本当に心からそう思う。
 「あー!!」
 突然、日葵が店の外を指差して叫んだ。
 「今の、瀬戸悠理じゃない!?」
 「えっ」
 急いで日葵の指差すほうを見ると、見慣れた柔らかい髪が見えたような気がした。
 でもそれも一瞬のことで、すぐにその影を見失う。
 「真紘!今すぐ追いかけたほうがいいよ!」
 「え‥‥‥でも、お会計」
 「私がここは払うから!」
 任しといてよ、と言うように胸をドンと叩いた日葵に思わず笑みが溢れる。
 「真紘!頑張れ!」
 「‥‥‥うん!」
 頼もしく送り出してくれる親友に返事をして、私は急いで店を飛び出した。

 「悠理っ、どこ‥‥‥!?」
 そう言いながら人混みの中を走る私の姿を周りの人達は不審そうな目で見る。
 でも、そんなことが気にならないぐらい、私は悠理に会いたかった。
 ‥‥‥いない。
 しばらく探し回ったけど、悠理を見つけることは出来ていない。
 まだ、そんなに離れていないと思ったんだけどな‥‥‥。
 考えが甘すぎたかもしれない。
 肩を落として、休憩するために近くの公園に入る。
 もう日も沈みかけているからか、公園は無人だった。
 ブランコに腰かける。
 ギ、ギッと軋むようなブランコの揺れる音が静かな公園に響く。
 俯くと、涙が出そうになった。
 せっかく日葵が背中を押してくれたのに‥‥‥。
 涙が溢れないように、天を仰ぐと、そこにいた会いたくて、気持ちを伝えたくてしょうがなかった人物と目があった。
 「何してんの?」
 そう言って、悠理は私の顔を覗き込む。
 「悠、理‥‥‥」
 かすれた声で、名前を呼ぶ。
 「ん?」
 悠理はそんな私の声を聞いて首を傾げた。
 どうしてだろう、あんなに言いたいことがあったのに‥‥‥。
 言葉が出てこない。
 それでも、やっと言葉を絞り出す。
 「悠理‥‥‥!好き‥‥‥!」
 私は、悠理に抱きついた。
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