強引な無気力男子と女王子
 「はぁぁ~・・・・・・」
 「アハハ、真紘、だいぶ疲れたって顔してるね」
 「そりゃそうですよう・・・」
 あっという間に私がモデルをしているという話は学校中に広まり、休憩時間には違う学年の先輩たちまで教室に来て、もみくちゃにされて、王子様スマイルを振りまいて・・・。
 それもこれも、連音さんが私を男だと勘違いして半ば強引にスカウトしたせいだ。
 隣でチョコミントのアイスを食べながらカラカラと笑う連音さんをジトーッと睨む。
 そんな視線に気づいてなのかなんなのか連音さんは「そんな真紘に朗報です」と愉快そうな顔で声を上げる。
 「なんですか?」
 「真紘、明日から夏休みだよね?」
 「そうですけど」
 今日は終業式で、学校が早く終わった。
 だからこんな昼間から溜まり場にいるんだけど。
 なんだかんだ言って、私もここに入り浸ってるんだよね。
 クーラーきいてて快適だし、広いし、冷凍庫にはアイスが常備されてるし。
 「来週の日曜日、あいてる?」
 「確か・・・予定なかったと思います」
 「良かった」
 「?」
 撮影があるとかかな?
 どこが朗報なんだろう?
 割と最近撮影してるけど。
 「日帰りで皆で海行こう!」
 「・・・えぇっ!?」
 海?
 急にどうして。
 「もちろんみんなと夏の思い出を作るっていう目的もあるんだけど、次の写真展のテーマが『夏』なんだよね。だから、プライベートビーチで海を背景に水着姿とかで撮影をしようと思って。近くに別荘もあるからそこで着替えとかはするよ」
 「プライベートビーチ・・・別荘・・・」
 庶民の私には無縁そうな言葉がポンポン出てきて戸惑う。
 やっぱり、連音さんってお金持ちだよね・・・?
 私の考えを読んだのか連音さんは「あれ、言ってなかったけ。親が企業の社長なんだよ」とこともなげに言う。
 つまり、そこは連音さんの実家のプライベートビーチと別荘なのか。
 「お昼にはバーベキューもするよ~」
 「おー、楽しみだねー」
 いつからいたのか、棗さんも会話に混ざる。
 「真紘も行くよね」
 断る理由もないし、海には行きたいし。
 「行きます」
 「そうこなくっちゃ」
 「あ、でも水着・・・」
 さすがに水着はバレるよね、性別。
 「んー、真紘は水着じゃなくて、薄着の衣装にしようか、じゃあ。アロハシャツとかも、真紘ならオシャレに着こなせそうだし。まあ、衣装は用意しとくね」
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