強引な無気力男子と女王子
 「いいと思いまーす」なんて完全なる棒読みだし!
 絶対思ってないでしょ!?
 「いや、私は・・・」
 「「「いいだろ?柳井」」」
 やんわり断ろうとしても団結した男子たちはそれを許さない。
 よくねぇよ!と大声で言ってやりたい。
 「お、じゃあ女子は希望が多い柳井で決まりだな」
 「はっ・・・・・・」
 はぁ!?と言いかけて慌てて口をつぐむ。
 ここは学校だ、落ち着け私。
 この馬鹿担任!
 本当は人にバカなんて言っちゃダメなんだけど、心の中で言うくらいは許してほしい。
 関さんはカツカツカツ、と黒板に書いてある「文化祭実行委員」の横に「柳井真紘」と書いた。
 それを見た一人の男子のピュゥ、という口笛が私の耳にも届いてさらに神経を逆なでする。
 「じゃあ、男子でやりたい奴はいないか?」
 その先生の問いかけに教室は無反応。
 担任から目を逸らす者もいれば、友達と喋っている者、俯いてる者など、色んな人はいるけど手を挙げるなんて人はいない。
 当たり前だ。
 皆、自分から進んでめんどくさいほうにいこうとはしないだろう。
 私だってしたくなかったのに!
 「・・・おいおい男子、一人もいないのか?」
 「・・・、ゃります」
 さすがに米村先生が困ったような顔をしたとき、教室の隅から小さなぼそぼそとしたかぼそい声が聞こえた。
 みんなが一斉にそちらを見ると、その子はちょっと居心地悪そうに、深くうつむいた。
 「おお姫野!やってくれるのか!」
 「・・・はい」
 また、ぼそぼそと姫野と呼ばれた子は喋る。
 関さんがまたきれいな字で黒板に「姫野歩夢」と書いたところでチャイムが鳴った。
 これで今日の授業は終わりだ。
 みんな、席を離れて終わりのホームルームの準備をしだす。
 教室が一気にうるさくなる。
 「柳井、姫野。ちょっとこっち来い」
 担任が手招きしているのが見えて小走りに先生に近づく。
 「今日の5時から、文化祭実行委員の顔合わせが会議室で行われる。二人とも行くように」
 「分かりました」
 「・・・はい」
 時間差で歩夢くんだっけ?とにかくその子も返事をした。
 分かりました、とは言ったけど・・・。
 これじゃ、日葵とのカラオケは無理かなぁ。
 ちょっと楽しみにしてたのに。
 後で謝らなくちゃ。
 最近、こんなのばっかりだ・・・。

 時間の十分前に会議室に着く。
 後ろにはたまたま会議室に向かうタイミングが合った歩夢くんが無言で立っていた。
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