ONLY YOU~過ちの授かり婚~
愛奈さんが純也さんの婚約者。
彼女は美人。平凡な顔の私なんて、彼女の引き立て役にしかならない。
邸宅の戻ると、父は私を書斎に呼び出し、堰を切ったように話を始めた。

「乃彩、身の程を知れっ。
伊集院家は近代の我が国の経済発展に貢献し、戦後の国の政治と経済の基盤を作った由緒ある名家だ。
それに、伊集院頭取は現・伊集院敦司総理の養子だ」

「分かっています!」
私は自分の身の程を知っている。だから、愛人でもいいと思った。
でも、愛奈さんはそれを許さなかった。

「分かっているなら、別れなさい。わしはあの条件を吞んで『共栄薬品』と吸収合併する」

「お父様・・・!?」

「こちらには不利かもしれないが、このまま会社を潰すと大勢の従業員達が路頭に迷う。
それだけは阻止したいんだ」

父にとって従業員は家族同然。
家族を守るのが長の役目だと自負していた・・・


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