ONLY YOU~過ちの授かり婚~
アラカルトを覗き込み、最初はマティーニをオーダー。

スマートフォンを見つめ、吐息をついた。

ふと見ると隣には一人の男性が腰を下ろしていた。

ダークグレーの中折れ帽子に黒いサングラス。
顔は良く見えなかったが輪郭の彫りは深く、程よい厚みのある口許は艶やかだった。

着ているトレンチコートは光沢のある黒、フォルムは細身のデザイン。
スラリとしていて身長は百八十センチ以上ある。

「さっきから君、俺のコトジロジロと見ているけど…何?」

彼は黒いサングラス越しに私を訝しげに見つめて、話し掛けて来た。

声は甘く響く、優しい物腰のテノール。

「その中折れ帽子が気になっただけよ」

「どうして?」

「別に…意味はないわ」


< 9 / 196 >

この作品をシェア

pagetop