君は麦わら帽子が似合わない。
「そんなことない!パパは似合うって言ってた!」
「似合わないよ。それじゃあっちに行っても、君は浮いちゃうね」
あっち。
一瞬あっちってなんだろう、と思ったけれど、現実に引き戻されつつある私はわりとすぐに理解ができた。あっち。そう、私は来月にはこの大都会を離れて、パパの故郷である島に引っ越す。コンビニも数件しかない島に。見たことない夏で現実逃避を図ろうとしたのに、簡単に引き戻されてしまった。
「似合わない。麦わら帽子も、島で暮らす君も」
「そんなことないよ。私の名前“海”だよ?むしろ、海が近くにないこの都会の方が似合わないんじゃないかな」
寂しさを必死に押し殺して、現実と向き合うための必死の言い訳。言い訳している自分の唇が少し震えていた気がして、それを司くんは見落とさなかった。
「唇、震えてる」
「うるさい」
「ポッキンアイス、溶けてるよ」
「うるさ……あっ、」
無意識に握りしめていたポッキンアイスは、プラスチックの中で氷のカケラもなく液体へと変貌していた。アイスからアイスらしい冷たさを感じられれず、生温さがそこにはあった。まるで、自律神経が混乱して夏バテしそうな私みたいだ。