君は麦わら帽子が似合わない。
「君は麦わら帽子が似合わない」

頭にむわりと外気が触れた。
ポッキンアイスに意識を捉われていたら、司くんがすぐそこまで接近していたことに気づかなかった。麦わら帽子は、彼の手にある。あ、麦わら帽子取られたんだと理解するまで、数秒がかかった。
次に司くんを見上げた瞬間、彼もまた私のことを見下ろしていた。司くんの瞳には、涼しげな彼に似合わない熱が帯びていて、また心臓の奥が縮んだ気がした。

「だから、君はここにいなよ」

小さく、司くんは呟いた。

「そばにいてほしい」

いままでに聞いたことのないような響きで、ささやかに、祈るように。柔らかな震えを持った声だった。音の波が心地良くて、私はしばらく意味も理解せずに、その余韻に聞き惚れていた。

「……つかさ、くん」

見たことのない夏が見たかった。見たことのない顔、見たことのない景色。感じたことのない気持ち。触れたことのない温度。
彼は今までに見たことのない顔をしていて、私は感じたことのない気持ちを抱いている。この気持ちを言葉にしてしまえば、私の自律神経は混乱どころか崩壊を迎えそうだった。心臓が締め付けられて、目頭は熱を帯びていて、唇は震えていて、手足に力が入らなくて。今にも膝から崩れ落ち落ちそうだ。

涙が溢れないように、私は上を向いた。
そこには、青い空が広がっている。そう、見たことのない青が広がっていた。

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