きっともう恋じゃない。


帰り道の途中で新見くんからのメッセージを受信した。


『連絡先は残していてほしい』

『後期もよろしく』


絵文字も顔文字もないと、これを打ったのが新見くんかわからなくなる。

もちろん、と返すくらいは誰にも何も言われないし、文句も言わせない。


携帯を鞄に入れようとして、まおちゃんに勢いで電話をかける。

これで出なかったら、と躊躇うよりもかけてしまった方がいい。

出なかったら出なかったでまおちゃんの家に突撃すればいいだけだ。


『もしもし』

「あっ、もしも……って、え?」


数コールで繋がった通話に声が上擦るのも束の間、違和感に気付いて携帯を取り落としそうになる。


「かおる!?」

『うるっせえ』

「え、なんで? まおちゃんにかけたよね……?」

『眞央なら飯買いに出てる』


なんとなくわかった。

薫がまおちゃんの部屋にいるか、もしくはまおちゃんが家に来ているのだろう。

それにしたって、置いていったのか知らないけど躊躇いなく人の電話を取るあたりを叱るべきか否か。


「すぐ戻りそう?」

『あ、あー……どうだろ。姉ちゃんは?』

「わたしももう帰るよ」

『じゃあ眞央ん家にいるから。気ぃつけて』


ぷつっと一方的に切られた。


「へ……?」


まおちゃんの家。まおちゃんの部屋。

ネジが一本飛んだみたいに上手く回らない頭で、まあ薫がいるなら大丈夫かなって楽観的な考えをしていたことも数分後に後悔することになる。

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