貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます【番外編追加しました】
「陛下の、おなりです」

 声がかかって、広間にいた諸侯と官吏たちは、ざ、と頭を下げる。

(失敗……だったか)

 男は、心の中で舌打ちをする。


(すり替えた毒入りを確かに口にしたと連絡が来たのに……運のよい方だ。まあいい。たとえ死なずに済んだとしても、あの薬は神経毒だ。しびれが残れば、一刻の間はろくにしゃべることもできまい)

 まともな対応もできないと諸侯に広く知られれば、皇帝として不適格だと誰もが思うだろう。それだけでも、晴明を皇帝から引きずり下ろす要因にはなりえる。



 頭を下げた先を皇帝が過ぎていく。力強い衣擦れの音に、男は、おや、と疑問を感じる。それは、とても毒に侵された人間の動きではない。
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