貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「いいのか?」
「はい」
 紅華の返答には、欠片の迷いもなかった。いつも通り、紅華は紅華のままに。
(そうだ。これが、俺の惚れた女だ)
 天明も少しだけいつもの調子を取り戻して、にやりと笑ってみせる。

「結婚初夜、か」
 紅華の、顔どころか首筋までが赤く染まった。

「わ、わざわざそんなこと、言わないでください!」

「抱いていいんだろ?」

「だから!」

「はいはい。本当に、紅華は可愛いな」
 細かく結い上げた美しい黒髪に、天明が口づける。

「……面白がっていますね?」

「さあ?」

 紅華は頬を膨らませて天明を睨むが、天明はその頬にもまた口づける。愛しげに髪をなでられれば、紅華もいつまでも拗ね続けられるものではない。

 しばらく視線をさまよわせていた紅華が、おそるおそるいった。

「あの……一つ、お願いしてもいいですか?」

「なんだ?」

「この服……」
 紅華は、少し体を離して自分の姿を見下ろす。

「これ正装ですから、複雑すぎて私一人では脱げないのです。あの……大変申し訳ないんですけど、脱ぐのを手伝ってもらえますか?」

 着替えを手伝うのは、侍女の仕事だ。そんなことを皇帝にさせてしまうことを紅華は申し訳なく思う。

 恥ずかしそうに上目遣いになった紅華に、天明は、ついに声をあげて笑った。

「願ってもない」

 そう言って天明は、明るい気持ちで紅華の手を引いて黒曜宮へと向かった。




【終】
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