雨あがりの匂い【中学生日記①】
 葉っぱばかりとなった、桜並木の通学路。部活の友達と校門で別れ、奈緒は一人で歩いていた。

「みんな分かんないのかなぁ、この匂い…… 」

 やわらかだった若葉の色も、日増しに色濃くなってきた。ドンヨリとした曇り空が、その葉末から覗いている。
 風がときおり、木の葉を揺らした。

「いい匂いなのに……なぁ…… 」

「だよな…… 」

 背後から男子の声……
──え! だっ、誰?
 奈緒が振り向く。
──あ……
 同じクラスの男子生徒だった。

 奈緒が以前から、少し気にしていた異性。その彼が、すぐ後ろを歩いていた。

「オレも好きだよ、この匂い。なんか知らんけど……」

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