骨なしチキン野郎って【中学生日記②】
 彼女に気付いてほしい……

 でも「好き」って言った途端、関係が壊れちゃうんじゃないか。同じクラスだし、やべぇょ。

 でも、なんでこんなに、好きになっちゃったんだろう。恋に落ちるって、こういうことなんだな。
 ハァ──  深い溜め息が、思わず漏れた。



 先日の部活帰りのことだった。

 新緑の並木道。
 別れ際、彼女が見せた満面の笑み…… 

「ぅ、奈緒(なお)ちゃん……かわいい」

 いま、こうして彼女を思い出しているだけでも、胸が苦しい。
 ドキュン……
 ハートが射抜かれた。
 その瞬間から、オレの中で流れていた時間が変わる。
 恋の始まり。そう、予感した。

「こんな気持ち、初めてだ。身体が熱い。微熱もあるし、きっとこれは恋の病……だったら、寝とけってんだ」

 オレは、かたわらに置かれたベッドに転がる。掛布団を掻き寄せ、ギュッと抱きしめた。
 布団の端に顔を埋め、唇を押し付けてみる。

「奈緒ちゃん……好きだー」

 そう、脳裏で叫んでいた。
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