仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 なにか言いたげなのに、なにも言ってこない。そんな視線が気にかかって、メールを送信したあとに渡辺へと目を向ける。

「なんだ?」

「なんだ、とはなんでしょう?」

「ずっと俺を見ていただろ。気になることでもあるのか?」

 渡辺は俺のひとつ年下の有能な秘書だった。

 父の秘書であるもうひとりの渡辺――の息子である。ひと昔前ならば、親子揃って皆崎家に“仕えている”という言い方でもするのだろうか。

 それもあって関係は気安い。友人というより幼馴染に近いけれど、渡辺は仕事になると頑なにそういった親しさを消し去る。

 公私混同をしないタイプだと知っても、俺の態度は変わらない。普通に話しかけ、普通にやり取りをする。もともとそこまで徹底できるほど器用なタイプじゃない。

「気になることなら、ひとつだけ」
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