仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 考えてみようともせずすぐ聞いてしまうところが、私の子供っぽいと呆れられてしまうところだろう。

 でも、和孝さんは呆れないし、受け入れてくれる。

「紗枝さんからキスしてほしい。いつも俺からだったから」

「……!」

 ぶわっと全身が熱くなる。

「そ……そっか……。それなら……うん……今でもできるね……?」

「へえ、今?」

「えっ、あっ、違った?」

「いや? 今してくれたら、もっと幸せになるよ」

 見つめてくる瞳には期待の色がある。直視できないのに目が離せない。

 覚えのある感覚を以前いつ感じたものだったのか考え、ああと気付く。

(一目惚れしたときと同じだ)

 勝手に高鳴り始めた鼓動をうるさく思いながら、和孝さんの肩に手を添えた。

「上手にできなくても怒らないでね」
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