仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 私の身近にある香りと言えば、絵美さんの花屋に充満している植物の香りが主なものだ。草木特有の青臭さが混ざることもあるし、様々な花の甘い香りが入り混じることもある。強い匂いのものと遭遇したとき、香りが甘すぎて胸焼けしてしまいそうだと言ったのを思い出した。

(だけど、甘い香りがするからこそいろんな人が求めるんだって言ってた)

 絵美さんの柔らかい笑顔と声が脳裏によみがえる。

 なぜだか勇気を与えられたような気になりながら、ついに香水の箱へ手を伸ばした。

 グレーの箱はシンプルで高級感がある。紙でできているため、濡らすわけにはいかなかった。

 手のひらに収まるサイズの四角い箱を丁寧に開けると、中からお礼の贈り物にしては豪華すぎる香水瓶がころんと飛び出した。

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