仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 それに、である。またこの人に翻弄され、甘やかされてしまうのは悔しい。たまには私が翻弄して甘やかす側に回ってみたい。

「じゃあ、目を閉じて」

「え、それは嫌だな」

 即答されて目を瞬かせてしまった。

 和孝さんはいたずらっぽい笑みを浮かべて私を見つめ、腰にそろりと手を伸ばしてくる。

「だって頑張る紗枝さんの顔を見たいだろ」

 当然のように言われるけれど、私はそんな恥ずかしい自分の姿をまじまじと見られたくない。

「だめ」

「じゃあ、今日も俺からするよ。それならいいよな」

「それもだめ」

 さっそくキスを仕掛けてこようとした和孝さんを押しのけ、ぶんぶんと首を横に振る。

「意地悪しないで!」

「夫として当たり前のことを言ってるだけだと思うんだけど」

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