仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
(また気を遣わせたんだろうか)

 触れられて馴れ馴れしいと思うはずがない。むしろ、初めてそうして触れてくれたことをうれしく思ったぐらいだった。

 今もまだ、思い出して胸が騒ぐ。

「……私、本当に気にしてないよ」

「うん、ありがとう」

 和孝さんはそう言ってくれたけれど、どこまで私の本心として受け取ってくれたのかは疑問だった。


 帰宅してからの雰囲気は、お世辞にもいいものだと言えなかった。

 ふたりきりのリビングには重い空気が漂っている。

(改めて気にしてないよって言うのも、逆に変だよね……)

 和孝さんが誤解してしまった原因は、おそらく私が触れていた手から逃げたせいだろう。

 純粋に恥ずかしくなって距離を取っただけだったけれど、嫌だから離れたと思われても仕方がない。
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