寄り添って、そっと手を繋ごう
「最悪って、誰のこと?」
「ひぃっっ?!」
頭上から突然降ってきた声に情けない声をあげてしまった。
「ひどいなー。これ、返しにきたのに」
手にシューズとタオルをぶらさげて、宏人先輩が意地悪く笑っている。
「座り込んで、どうしたの?」
こてん、と首をかしげる仕草は、女の私から見ても「かわいい」と思わざるを得なかった。
「なんでもないです。ありがとうございました」
これはいけない。私が、特定の先輩と距離を縮めることはあり得ない。許されない。バレた時が怖い。
しかし、
勢いよく立ち上がると、また立ちくらみに襲われてしまう。
「ちょっと、仁菜ちゃん」
宏人先輩がふらつく私を支えてくれる。
…これは、とても、よくない。
なんで今日に限ってこんなに調子が悪いのか。ひとりなら、しばらくうずくまっていられるのに。
一刻も早くここを立ち去りたい。
「…」
今日は、不幸なことに飲み物を忘れていた。
部活の間は、支給されるスポーツドリンクがあるが、量に限りがあり、私が多くを飲むことは周りの視線が許さなかった。
