好きじゃない
「大好きだよ」

口元にいつもの笑み。
私の好きな落ち着いた笑み。

「じゃなきゃ、みんなの前であの絵は描かない」

そう言って、蓮は腕を伸ばす。
私の頭を捕らえると、グイと自分の胸元に引き寄せる。
熱い蓮の胸。

「めっちゃ遠回りしたわ」

耳元でハハッと軽く笑い飛ばす声。

「ほんとは夏休み前に言うつもりだったんだけどな」

私は蓮の腰に腕を回す。

「ほんと待たされたわ」

つい本音が出てしまった。

「頑張りなよって言ったのカナじゃん」

蓮は悪びれもなく言う。

「はー?」

蓮の溝落ちを軽く殴る。

「いって」

蓮は倒れそうになる自転車を守りながらお腹をさする。

「頑張りなよって言ったからかよ」

軽く足も蹴ろうとすると、蓮は「やめてー」と言って避けた。

「鼻の下伸ばしてっからだろうが」

私が次に肩を叩こうとすると、その手をまた捕まえられた。

「まあまあまあまあ」となだめる声。

ずるい。

蓮が私の目を見つめる。

ずるい。

ゆっくりと顔が近付いてくる。
直前で蓮の口元がフワッと笑う。

私の好きな口元。

蓮と私は終わらないキスをした。
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