月に魔法をかけられて
「では時間もないので、これからメイクをしますから座ってください」

私の曇った顔とは真逆の笑顔の美容部員さんに促され、私は強制的に椅子に座らされた。座るとすぐに首にケープが巻かれ、美容部員さんの手によって、自分がしていたメイクが瞬時に落とされていく。

美容部員さんは、すっぴんになった私の顔に保湿用の美容液をたっぷりとなじませて浸透させると、化粧水、乳液をパッティングし、日焼け止めや下地、ファンデーションを手に取りながら、あっという間にベースメイクを完成させた。

続いてフェイスパウダーで肌に透明感を出すと、眉を整え、チークや新色のアイシャドウ、アイラインにマスカラ、リップ……と流れるような無駄のない作業で、私の顔は見違えるような華やかな別人へと変身していった。

隣を向くと、あゆみちゃんもパールゴールドのメイクでかなり大人っぽい仕上がりになっている。いつもの可愛い後輩のあゆみちゃんから、かっこいい大人の女性に変身といった感じだ。

「わぁ、美月先輩! やっぱりこのパールピンクのメイク似合いますね。めちゃ可愛い。可愛すぎです!」

あゆみちゃんが私の顔を見て声をあげる。

「あゆみちゃんもかっこいい大人の女性っていった感じだよ。パールゴールドのメイク、すごく似合ってる」

「そうですか? 私、ほんとはパールローズが良かったんですけど、武田絵奈の色ですもんね。でもこれからは可愛いより大人の女路線でいこうかな」

あゆみちゃんはまんざらでもなさそうに、鏡でアイシャドウやチークの色を確かめていた。

「じゃあ次は髪の毛をセットするわね。それが終わったらパーティー用の服に着替えてもらうからね」

瞳子さんが手際よく指示を出す。

「美月ちゃんはウェーブを出してサイドの髪を後ろで纏めたハーフアップね。少し首元がみえるようにしましょう。あゆみちゃんはショートボブだから、少し巻いてもらって毛先にウェーブを出してもらおうかしら」

2人の美容部員さんはメイクだけでなく髪の毛もアレンジができるようで、私たちは瞳子さんの指示通り、ウェーブを出したふんわりとした髪型にアレンジしてもらったあと、それぞれパーティー用の服装に着替えた。
< 109 / 347 >

この作品をシェア

pagetop