月に魔法をかけられて
瞳子さんも今日のパーティー楽しみなのかな?
いつも以上に声が明るかったよね?

私は副社長に瞳子さんとこれからパーティーの打ち合わせをすることと、出発までには戻ることを告げると、ノートと筆記用具と着替えを持って12階の会議室へと向かった。

「失礼します」

会議室の前でノックをして扉を開けると、いきなり異様な光景が目に飛び込んできた。なんと会議室のテーブルの上には大きな鏡やたくさんのメイク道具が置かれ、にこやかな顔で私を見つめる瞳子さんと2名の美容部員さん、そして首にケープをされてすっぴんになったあゆみちゃんが椅子に座っていたのだ。

「瞳子さん、パーティーの打ち合わせじゃ……」

私は状況を理解することができず、笑顔で私を見ている瞳子さんに尋ねた。

「もちろん打ち合わせもするわよ。その前に今日のパーティーはクリスマスコフレのパーティーでもあるけど、新色コスメの発表も兼ねてるの。実はコスメの発売が前倒しになってしまって、年明けの発売予定だったのが12月10日になったの。だから2人には新色のメイクをしてもらおうと思って。私も新色のパールゴールドつけてるの」

瞳子さんが自分の目元のアイシャドウを指さす。
色っぽい瞳子さんに艶感のある新色のパールゴールドのメイクがとても似合っていた。

「うわぁ、瞳子さん素敵……」

思わず心の声が漏れてしまう。

「ありがとう。美月ちゃんにそう言ってもらえて私も嬉しいわ。今日は美月ちゃんとあゆみちゃんが半分メインだからね」

「半分メイン?」

「今回の新色は『潤いのある艶感と品のある発色』をコンセプトにしたアイシャドウとリップの3色が出るでしょ。パールローズは武田絵奈が新作CMと一緒に紹介するんだけど、あとの2色は紹介できないじゃない? だから2人には急遽モデルになってもらおうと思って。パールゴールドはあゆみちゃん。美月ちゃんにはこの間と同じパールピンクでメイクしてもらおうと思うの」

「モデル?」

「そうモデルよ。会場のステージにあがってもらって、スクリーンに映すの。そして招待客に艶感や発色、パールの輝きやそれぞれの色の違いについて見てもらうの」

「そ、そんなの無理ですよ。瞳子さん」

私が首を横に振って拒否すると、すっぴんのあゆみちゃんがすかさず口を開いた。

「美月先輩、大丈夫ですよ。今回は私もいますから! 早く美容部員さんにメイクをしてもらいましょ」

あゆみちゃんはノリノリでこの状況を楽しんでいるようだ。
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