月に魔法をかけられて
ここはどこだろう……?

白とダークグレーで統一されたシックな部屋。
目の前には大きな壁掛けのテレビが設置されている。
ベッドはクイーンサイズはあるだろうか。ひとりで使用するには大きすぎるくらいだ。

テレビの横にはサイドボードが置いてあり、その上にはスタイリッシュで男性らしいデザインの高級腕時計がお洒落な黒い収納ケースに入れられている。6本ほどある全ての腕時計がその中でくるくると回転していた。

急にガチャッとドアの開く音がして視線を向けると、黒の細身のパンツに、オフホワイトのケーブルニットのパーカーを着た副社長が顔を出した。

「美月、起きたのか? 大丈夫か?」

突然現れたスーツ姿ではないラフな恰好の副社長に、私は驚いて目を見開いた。いつもかきあげている前髪を下ろし、私にとても爽やかな笑顔を向けている。首元から覗く肌がセクシーで、まるでモデル雑誌からそのまま出てきたような姿だ。

どうして副社長がここにいるの?

「美月?」

副社長が窺うように私に近づいてくる。
私は思わず掛け布団をギュッと握りしめて、自分の方へ引き寄せた。

「起きたらいきなり知らない場所で、俺がいたらびっくりするよな。昨日さ、店を出て美月を送って帰っただろ。それで美月の家の近くに着いたんだけど、美月全然起きなくてさ。何度も起こしたんだけど全く起きてくれなくて、美月のマンション知ってたら連れて行けたんだけど俺知らないだろ? だからここに連れてきたってわけ。ここは俺の家」

副社長はまるで日常会話でもするような感じで、普通に話しながらにっこりと微笑んだ。私はその話の内容に、呆然と副社長の顔を見つめたまま固まってしまった。

う、うそ……。
私、副社長の家に泊まったってこと?
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