月に魔法をかけられて
ううーん……。

ベッドの上で大きく伸びをする。
少し横になったことで頭の痛みもなくなったみたいだ。
私はサイドテーブルに置いてあったミネラルウォーターを手に取り、音を立てないように二口ほど飲むと、腕時計を見た。

えっ……? 
16時17分って……う、うそでしょ……。

びっくりして腕時計が動いているのか、耳にギュッと押し当てて確認する。目を閉じて耳をすますと、カチッカチッとリズミカルに動いている秒針の音が聞こえてきた。

私、ここでずっと寝てたってこと?

私は急いでベッドから降りてショルダーバッグを手に取ると、部屋のドアをゆっくりと開けた。

「美月、起きたのか? 頭痛は大丈夫か?」

リビングのソファーで寝転んで本を読んでいた副社長が、身体を起こして笑顔を向けた。

「副社長、ほんとにすみません。こんな時間だったなんて……。ほんとにすみません……」

立ったまま自分の膝に顔をつける勢いで、深々と頭を下げる。

「そんなことは気にしなくていいよ。少しは身体は楽になったか?」

「はい。おかげさまで……。頭痛もなくなりました」

「それなら良かった。何か飲む?」

「い、いえ……。さっきいただいたミネラルウォーターがありますので大丈夫です」

「そっか。じゃあ立ってないでこっちに来て座ったら?」

副社長が自分が座っていたソファーの位置から少し横にずれた。

「は、はい……。すみません……」

重厚感のあるダークグレーの布張りのソファーは、180センチを超える副社長が寝転んでもまだ余る大きなソファーで、私はその端っこにちょこんと座った。
< 157 / 347 >

この作品をシェア

pagetop