月に魔法をかけられて
「ほんとに悪かったな。つらかっただろ。休みが1日潰れてしまったな」

副社長は再び私の近くに座り直すと、申し訳なさそうに私の顔を見つめた。副社長との距離の近さに、私は視線をそらすように思わず頭を下げる。

「副社長こそ私のせいでお休みが潰れてしまってすみません。それにずっとベッドを占領して寝てたりして……。副社長こそ疲れが取れてないですよね。ほんとにすみません……」

「俺のことはいいよ。いつも会社から帰ったらよくこのソファーで寝てるからな。それより風呂入ってないから気持ち悪いだろ。シャワー使うか?」

「い、いえ、大丈夫です。もう帰りますので……」

私はそう言って自分のショルダーバッグを手に取った。

「そっか。じゃあ送っていくよ」

「そんな大丈夫です。ひとりで帰れますから」

慌てて大きく首を振る。

「その格好だと電車に乗るのもタクシーに乗るのも嫌だろ?」

副社長にそう言われて、自分でノースリーブのワンピースを見つめた。

「だから送っていくから。そうだ、美月が着れそうな上着があったかな……」

副社長はそう言ってさっきまで私が寝ていた寝室に入っていくと、ダブルジップのネイビーのジャケットを持ってきた。

「これならそのワンピースと合うだろ。帰るまでこれを着てたらいいよ」

柔らかく口元を緩めて私を見つめると、そっと肩に優しくかけてくれた。
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