月に魔法をかけられて
「あー旨かった。美味しすぎてほとんど俺が食べたけど。美月の分まで食べてしまったみたいで悪かったな」

「い、いえ……。たくさん食べてもらってありがとうございます。すぐ片づけちゃいますね」

私はなるべく視線を合わせないように、お皿をお盆の上に置いていった。

「俺も手伝うよ。これキッチンに持って行ったらいい?」

「だ、大丈夫です。副社長は座っていてください」

下を向いたままテーブルのお皿を取っていく。

今、副社長の顔を見たら涙が出てきそうだ。

自分の副社長に対する思いと、副社長の絵奈さんに対する思い。決して交わることのないこの一方通行の思いに、どうしようもない悲しさが胸の中で溢れ出す。


どうして副社長に惹かれてしまったんだろう。
今になってこんな気持ちに気づくなんて……。


必死で堪えていたのに涙がこぼれ落ちてきた。
私は副社長に気づかれないようにお盆を持って立ち上がろうとした。

「美月? どうした?」

私の顔を見た副社長が腕を掴んで、手に持っていたお盆を取る。私はそのままその場に座らされた。
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