月に魔法をかけられて
「ふ、副社長が……私の作ったごはんを……たくさん食べてくれたのが……すごく……すごく嬉しくて……」

次の瞬間、私は副社長の胸に抱き寄せられていた。
長い腕が私の身体をとても柔らかく包み込む。
副社長のいつもの檜のフレグランスの香りがふわりと漂ってきた。きゅーんと胸の奥が反応し、全身が瞬く間に熱を帯びてくる。

ドクン──。ドクン──。

私の心臓の音と同じように、副社長の胸からもその音が聞こえてきた。

「美月……そんな理由で泣いてたのかよ。心配したじゃないか……」

耳元で掠れた声が囁かれ、片手で私の身体を抱き寄せたまま、もう片方の手で優しく私の頭を撫でる。

「美月、ありがとな。ほんとにありがとな。美月のごはん、すごく旨かったよ」

耳元で掠れた声が聞こえるたびに私の身体がビクンビクンと反応する。

「あ……ありがとうございます……」

「美月、可愛いな。ほんとに……」

副社長はそう囁くと、私の身体をもう一度ぎゅうっと優しく抱きしめた。


ねぇ、副社長。
抱きしめられて耳元で可愛いなんて囁かれたら、私もっともっと好きになっちゃうよ。
好きになったって私の気持ちは報われないのに……。
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