月に魔法をかけられて
「ううん。きっと私のせいよ……。壮真にものすごく怒られてね……。私の行動が軽率だったの。こういうことがあることを想定するべきだったわ……。美月ちゃん、本当にごめんなさい。何度謝っても許されることじゃないけど………」

「瞳子さん、許す許さないとか、瞳子さんのせいじゃないです。たまたま運が悪かっただけです。頭をあげてください……」

瞳子さんはとても辛そうな顔をして、頭をあげた。

すると、瞳子さんの後ろで、瞳子さんの足をギュッと掴んだ小さな男の子が、顔だけを出してじっとこっちを見ている。

「瞳子さんのお子さんですか?」

私は話題を変えるように、瞳子さんに尋ねた。

「そ、そうなの。啓太、ほらお姉ちゃんに挨拶して」

男の子は恥ずかしいのか、私をじっと見たまま何も話さない。

「ごめんね。この子、最初は人見知りでね。慣れたら大丈夫なんだけど……。まあ、可愛い女の子が大好きだから、すぐに美月ちゃんにべったりくっつくと思うわ」

瞳子さんは口元を緩ませながら、啓太くんの頭を撫でる。

「こんにちは。啓太くん」

私はニコッと微笑みながら、啓太くんに話しかけた。

啓太くんは恥ずかしいのか、瞳子さんにぴったりとくっついたまま、何も言わず私をじっと見続けている。

啓太くんの顔を見ていて、心臓がドキン──と音を立てた。

(副社長に似てる……)

副社長を子供にしたような啓太くんの顔。

小さいのにとても整った顔をしていて、涼やかな切れ長の目は副社長にそっくりだ。

(あっ、そう言えば、瞳子さんと副社長って………)

パーディーでの話を思い出し、ハッとしてしまう。

その表情に気づいたのか、瞳子さんがふふふっと笑いながら口を開いた。
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