月に魔法をかけられて
「美月ちゃんも気づいた? 啓太、壮真に似てるでしょ?」

何て答えていいのかわからず固まってしまう。

「啓太、壮真を呼んできてくれるかな。お姉ちゃんが起きたよって」

瞳子さんが啓太くんの目線に合わせて微笑むけれど、啓太くんはじっとしたまま動かない。

「どうしたの? 啓太、ここにいるの? じゃあ私が呼んでこようかしら。啓太、お姉ちゃんと一緒にいる?」

瞳子さんがそう尋ねると啓太くんはこくんと頷いた。
瞳子さんが部屋から出て行き、啓太くんと2人になる。じっと私を見つめる啓太くん。なんだか小さな副社長に見つめられているようで不思議な気分だ。

「啓太くん、私の名前は山内美月です」

啓太くんの近くに顔を近づけながら挨拶をする。

「みづき?」

初めて啓太くんが口を開いた。

「そう、美月だよ。啓太くんはいくつかな」

すると小さな手を全開に広げて私に見せる。

「5歳なんだ。お利口さんだね。保育園は楽しいかな?」

「うん。たのしいよ。ななちゃんもいるし。はるなちゃんもいるよ」

「そっか。お友達がいっぱいなんだね」

「うん。けんとくんと、しょうくんと、ゆうたくんもともだちなんだよ」

啓太くんは私への警戒が解けたのか少しずつ近づいてきた。

「そうなんだ。お友達がいっぱいでうらやましいな」

頭を撫でながらにっこりと微笑む。

「みづき、ぼくもベッドにはいる」

私は啓太くんを抱き上げると私の横に座らせた。

「ぼく、みづきすきー」

小さな手をいっぱいに回して私にくっついてくる。
その仕草が堪らなく可愛くて私はクスッと笑った。
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