月に魔法をかけられて
「瞳子、直人さんは?」

「もうそろそろ来ると思うわ」

2人の会話に、また固まってしまう。

えっ?
瞳子さんの旦那さんが来るなら副社長早く帰らないと……。

私は焦りながら2人の顔を交互に見るものの、2人とも全く焦っている様子はない。

「あ、あの副社長……。大丈夫なのですか……?」

私はドキドキしながら声をかけた。

「はっ? 何が?」

きょとんとした顔をして私を見る。

「瞳子さんの旦那さんがもうすぐ来られるから……」

「瞳子の旦那が来るから? どういうこと?」

「見つかっちゃうから……。2人でいるところ………」

「見つかるって、別にしょっちゅう来てるから何とも思わないよ」

「あっ……そ、そういうご関係なんですね……。す、すみません……」

私はうつむきながら頭を下げた。

「どういう意味だ? そういう関係って?」

不思議そうな顔をしながら私を見つめる。

「あっ、いえっ……。啓太くんにとっては……大切なことですもんね……」

私がそう言った途端、瞳子さんが声を出して笑い始めた。
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